第24回 マニュアルカメラの人気


探していた写真サイトにやっとめぐり会えた、とメールを下さった方から次のような要望がありました。今まで一眼レフを使ってきたがこの度フジGSW680とフォクトレンダーの露出計を買ったのでマニュアルカメラについて書いて欲しい、とのことです。

まずフジGSWというカメラですが「中判」サイズのブローニーフィルムを使い、6×8cmの大きさに写るので680の名が付けられています。皆さんがお使いの35ミリ一眼レフのフィルムのほぼ5倍の面積があるので引き伸ばした時にその差が歴然と出ます。多人数の集合写真の場合などには一人一人の顔が鮮明に写るので観光地などで写真屋さんが使っているのがこの手のカメラです。

より美しいプリントを求めてこのカメラを買われたのでしょうね。ところがこの手のカメラは当然大きく重くなるため、露出計もストロボもオートフォーカスも内蔵されていません。単体の露出計で測定し、絞りとシャッターの組み合わせを選んでカメラにセットしてから手でピントを合わせてシャッターを切ります。ほとんどを「手動」でするためマニュアルカメラと呼びます。

実は35ミリの小型カメラの世界でも30年ほど前まではすべてマニュアルだったのです。一眼レフが主流になってからレンズを通した光だけを測光するTTLの露出計が内蔵され、オートプログラムを組み込んだAE撮影が可能となり、ついにオートフォーカスまで実現。その後も多分割測光などどんどん改良が進んで撮影者はますます楽チンになってきたわけです。

ところが最近になってマニュアルカメラが静かなブームとなっています。この方のように中判カメラなら理由があるわけですが小型カメラまでがこのブームです。わざわざ不便な時代への逆行とも見えるこの現象は一体どうして起きたのでしょうか?

まず一つは一般のグッズに見られるようなアンチックなスタイルがウケるのでしょう。数十年前の時計が再生産され結構売れているそうです。年月を経たデザインは古くてもその時代を知らない若い人達には新鮮に感じられるのではないでしょうか。そう言えば最新の一眼レフはどれも似たスタイルですよね。

次に人間性の回復、といえば大げさですが何もかもオートの機械任せでは面白くない。自分の手で露出を測り、ピントを合わせてシャッターを押す。そして手で巻き上げる。こうして写した写真がちゃんと撮れていた時の喜びは大きい。つまり「手造り」の喜びです。

これは撮影の基礎を覚えるのに大変役立ちます。そして最新のオート機構がいかにありがたいものであるかが改めてわかっていただけることでしょう。車の運転と同じで最初はマニュアルから始めた方がなぜ車が走るのか(なぜ写真が写るのか)理解できて良いかも知れません。

中にはいつまでもマニュアルカメラで撮影している方もおられます。それがその人には合っているわけで何も問題はありません。「写す」という作業を楽しむには少しでも自分の手を動かすべきだからです。それも写真の楽しみの一つでしょう。

ただ私の場合は20年以上、大判・中判カメラをマニュアルで駆使してきたものですからその反動からかオートで写せる35ミリ一眼レフは夢のようなマシンです。ファインダー内の情報さえ把握していればほぼ間違いなく写るのでルンルン気分です。ところが…。先日、教室である受講生の作品を見てドキッとしました。私が気が付かなかったモチーフを最高の光の状態で見事に捉えていたのです。

オートであれマニュアルであれ所詮は技術。何をどう表現するか、という感性まで備えたカメラはいつになったら発売されるのでしょうかねぇ…?

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