第78回 美しい日本

北京オリンピックをテレビで観戦している。いつものことだが、外国人の派手でしつこいほどのアピールを見ていると、控えめで目立つことを嫌う日本文化を擁護したくなってくる。先日、朝日新聞で次のような感動すべき記事に出会ったので紹介させていただく。

東大名誉教授の多田富雄氏によると「美しい日本」のルーツには四つの要素があるという。

まずひとつには「アニミズムの文化」
自然崇拝、自然信仰である。日本では古来より絶対的な神は持たず、自然の中に無数の神を見つけ、それを敬ってきた。ゆえに日本では一神教は育たず、宗教対立で戦争を招くことはなかった。

ふたつ目は「豊かな象徴力」
俳句や和歌は事実の記載ではなく、たった一言で世界を表現する。日本の芸術はこの象徴力のおかげで世界が尊敬する美を作り出した。能・歌舞伎や茶道・華道に至るまで豊かな象徴力に支えられている。(写真も同様に考えて良いだろう)

三つ目は「あわれ」という美学
滅びゆくものに対する共感や弱者への慈悲などあわれなものへの思いが日本の美の要素になっている。強さ・偉大さ・権威などを価値とする外国とは異なる日本独自の価値観である。それは日本人の心の優しさ、美しさ、デリケートさの根源である。

そして四つ目はそれらを技術的に包み込む「匠の技」
美術はもちろん、詩歌や芸能でも細部まで突き詰める技の表現がある。「型」や「間」を重んじる独特の美学である。それはまた日本の優れた工業技術のルーツでもある。

この四つの特徴が、日本の美しさを世界でも独自なものにしているというのだ。なるほど、とうなずけることばかりである。今後カメラを構えるときにはこれらの要素を考えながらシャッターを切るようにしよう。

さて、再びオリンピックの話題。体操日本は団体で銀メダルに輝いた。中国を抜くことはできなかったが、チカラで迫ったアメリカを振り切った。演技の美しさでは日本がトップで実に「美しい体操」を見せてくれた。
そして今飛び込んだニュースだが、柔道の女子63kg級で谷本選手が金メダル。ずっと一本勝ちしてきた彼女らしく、決勝も一本勝ち。マイクの前で良いことを言った。一本勝ちを中心に教えてもらってきたのでこれで勝ちたかった、と。最近レスリングのような柔道ばかり見てきたので久しぶりに日本の「美しい柔道」を見せてもらった。

美しい日本、がんばれ!