第41回  レンズ越しの風景

祭りを写す

  緑がまぶしい季節となった。5月は祭りが最も多い月である。きたる15日には京都三大祭のトップを切って葵祭の行列が都大路を練る。薫風の中で繰り広げられるこの王朝絵巻をテーマに祭りの写し方を考えてみよう。

  プロは特別に用意された報道席で撮影するのだから良い写真が撮れて当たり前だとよく言われるがこれは間違い。この席は祭りを紹介するための写真を新聞やテレビのカメラマンが撮影するためのものであり、狭くて身動きできないので皆同じような写真しか写せない。写真を趣味とするあなたはこうした紹介写真を撮るのが目的ではないのだから自分だけのカメラアングルを探すべきである。

  そのためにはまず祭りの由来をよく調べておくこと。昔は賀茂祭と呼ばれていたのになぜ葵祭となったのか。それがわかれば祭員がフタバアオイを身に付けている理由が理解できる。そしていつ頃から始まり、何を目的とした祭りなのか。それらを調べているうちに何を写すべきかがわかってくる。

 次に大切なのは行列のコースと時間を知ること。葵祭は午前10時30分に御所を出発し11時40分下鴨神社に到着。午後2時に同社を出発し3時30分頃に上賀茂神社に到着する。交通規制は前日の新聞で確認しておき、渋滞も見込んで早い目に出かけると良い。
  行列の出発前ならば女人列の衣装や衣冠に付けた葵の葉などを近づいて大きく写すことができる。あるいはこの写真のように祭りの脇役を写すのも楽しい。これは下鴨神社で撮影したもので花傘が社殿の朱色と重なりひときわ華麗である。藤の花で飾られた御所車なども出発前や休憩中にいろいろな角度から撮影することができる。

 どのお祭りもこのような写し方をすればまだまだ良い写真ができる。意外な発見もあり、「祭り」を写すことがきっと楽しくなってくる。
 さぁあなたもカメラを持って近くのお祭りへ出かけよう。

                         (京都新聞より転載)