第37回  カリフォルニア通信(3)・・東海岸編・・

レクチャーを受けたある講師から「見ておきなさい」と薦められたので東海岸までやってきました。サンフランシスコ空港を朝日を見ながら飛び立ち、ワシントンには夕日を見ながら到着。飛行機に乗っているのは5時間ですが時差が3時間あるため、8時間もかかるわけです。まる一日かけての移動で、アメリカ大陸の広さを実感。空港には私の写真集の翻訳をしてくれたジムとシズカさんが迎えに来てくれました。迎えがあるということはありがたいものです。翌日、お二人の案内で名所をまわった後は一人での美術館めぐりが始まります。

まずは国立美術館で開催中の「National Geographic Photography」展へ。これは有名なGeographic誌を飾った名作から「人間」をテーマに企画された写真展です。さすがに力強い作品が多く、アメリカ先住民の写真を中心に構成され圧巻でした。「人間」が写真にとっていかに大切なテーマかを考えされました。

次は今年9月にオープンしたばかりのアメリカインディアン美術館。ここでは写真展はなかったのですが彫刻家のALLAN HOUSERの作品群に感動。先住民をひたすら追い求めた「母と子」シリーズが特に有名で、この作品が代表作です。このような立体作品は生かすも殺すも照明(ライティング)次第で、その見事さに何点も撮影しました。

これはミュージアムショップに展示されていたタペストリーです。日本人に通じるものを感じませんか?

次はニューヨーク。この大都会を代表する写真ギャラリー HOUK GALLERYで開催中の「Bill Brandt」展を紹介します。講師が薦めてくれたギャラリーだけに広さ、内装ともに素晴らしく、なぜ無料で入れるのかわからないほど。展示中のヌードはこの作家の代表作でかなり前のものなのですがまったく古さを感じさせません。このようないつまでも飽きない作品を目指したいものです。

もうひとつのギャラリーも見て外へ出るともう暗くなっていました。見上げるとこのような光景が…。場所は五番街でティファニーがある交差点です。古いものと新しいものがそれなりに調和していますよね。日本のこれからの課題です。

さて、一年中賑わうメトロポリタン美術館。若いときにここで初めてアンセル・アダムスの作品と出会ったのですが今回はRICHRD AVEDONのポートレート作品が展示されていました。どれも写真集では見たことがあるのですがオリジナルプリントは大きさもあって、見ごたえします。人気のフランス絵画などと並んで写真も対等に扱われている点が日本と違います。大勢の人が次々と写真作品を見てくれるのはうれしい限りです。

これは会場内のショップですが開催中のアベドンをはじめ、他の写真家のポスターや写真集がどんどん売れています。日本も早くこうならないかなぁー。

次は本命の国際写真センター(I.C.P)。ここには写真学校もあり、写真だけでこれだけの人が集まるのか、と驚くほどの賑わいです。メインギャラリーではコーネル・キャパの「JFK for President」展が開催中で、入り口ではごらんのような大パネルが来場者を迎えていました。故ケネディ大統領のドキュメントですが、今でもこれだけ人気のある大統領は他にはないでしょう。

階下のギャラリーでは「Looking at LIFE」と題してLIFE(ライフ)誌を飾った名作が並んでいました。皮肉なことにここではケネディ暗殺の瞬間が写真だけではなく、8ミリで上映もされていたのです。

ギャラリーの横にあるブックショップではぎっしりと写真集が並び、写真を使った各種グッズも販売されていました。学生だけではなく一般人も多く、またまたうらやましく思いました。

ソーホー地区で撮影した夕景です。信号の色をアクセントに取り入れました。

最終訪問地のボストンは雪でした。2日前に降ったのが残っていたのですが、ここまで北に来るとやはり冷えるようです。ボストンコモン(公園)にはまだ色づいた葉が残っていました。

ここでは何といってもボストン美術館。東洋美術のコレクションでその名を知られています。前に来たときには京都の洛中洛外図が展示されているのを見て感動しましたが、今回は京都嵐山の100年以上前の写真が展示されていたのです。見にくいかもしれませんが写っているのはまさしく嵐山にかかる渡月橋です。「ART AND ARTIFICE-Meiji-Era-Travel Photography」展というユニークな写真展の中の一枚ですMeiji-Era というのは明治時代という意味で、京都以外の写真も展示されていました。写真の記録性ってやはり重要なのですね。

この美術館には日本人の学芸員がおり、会場はこのように障子を使って雰囲気を出しています。若い日本女性たちが「ワァー、日本だ!」と喜んで見ていました。

これは彫刻作品ですが背景とのマッチングの良さはこの美術館の見せ方のうまさなのでしょう。

感謝祭が終わり、街はクリスマス一色。イルミネーションが教会の尖塔とうまくマッチしています。写真家にとってボストンは絵になる街でたくさん写しました。一部しか見ていただけないのが残念ですがぜひ皆さん撮影にお越しください。

東海岸を駆け足で回って感じたことはアメリカの中では歴史がある地区だけに洗練されており、品の良さを感じました。でも、それはヨーロッパの特徴であり、アメリカの魅力はここからはるかに離れた西海岸にあるのでは、と思いました。そして、写真に関してはアンセルに代表されるウエストコースト派の魅力を再確認した次第です。
次は再びカリフォルニアからの通信です。