第32回 プロの誇り

眠っていた運転士

新幹線の運転士が運転中に眠ってしまい、駅のホームをかなりずれた所に自動停止した。気づいた車掌がドアをいくら叩いても運転士は起きなかった。そのような状態で停止できるのだから「さすがシンカンセン!」と喜びたいところだが一歩間違えば大惨事だったのだ。

「睡眠障害無呼吸症」などと言われているが運転士は前夜深酒だったとのこと。それなら翌日眠たくなって当然である。大切な用事がある前日はお酒は控えめにするのが常識で、数百人の命を預かる運転士なら言語道断である。

さらに驚いたのはその後のJRの処置だ。その運転士を交代させずに20分以上も運転させたという。お酒を飲む人はご存知だろうが翌日まで残った酒はすぐには醒めず、しばらくはボーとした状態が続く。その状態で時速200〜250キロという猛スピードで走り続けたのだから恐ろしいことだ。

指令が連絡ミスで届かなかった、と言っているがこうなれば一運転士の失態だけではなく、管理側の責任問題も問われる。いったい「プロ意識」はどこへ行ってしまったのだろう。

撮影旅行で

先日同行した東北への撮影旅行で、これぞプロ!と感心した事がいくつかある。まずは伊丹→三沢間のJAS便のスチュワーデス。満面の笑みを浮かべてのサービス。言葉もハキハキして気持ちがいい。これからの旅が楽しみになる。

2日目の昼食。一流ホテルだったのでフランス料理を予約しておいた。美味しいオードブルとパンに始まり、スープ、サラダ、メインの料理と続き、デザートの盛り合わせで締めくくり。いずれも納得させる味付けで、シェフの熱意が伝わってくる。タイミングよく、全員にワインをサービスしてくれた添乗員の I 君の気配りもニクイ!

3日目に宿泊した旅館の仲居さん。各部屋の案内に始まり、夜遅い宴会でもイヤな顔ひとつ見せず、実に気持ちの良い接待振りだった。また、翌朝早くからの朝食にも笑顔でサービス。玄関で見送る時には一生懸命に手を振ってくれた。彼女はバイトではなくプロだな、と思った。

プロの誇り

このようにプロは一生懸命でなくてはならないのだ。手を抜いたり、気を抜いたりしてはいけないし、仕事中に眠るなどもってのほかである。お金を払ってくれているお客様に申し訳ないではないか。

それではプロの写真家の場合はどうか。まずは、リクエストに応える写真を効率良く撮影できることが要求される。限られた時間内に限られた場所で、多くの人を納得させる写真を「高い確率」で撮影できなければならない。そして、一定のレベルをずっと維持できること。さらにまた、独特の「自分だけの世界」を築かねばならない。それらを満たして初めてプロの写真家と呼ばれるのであり、それがプロの誇りなのだ。

最後に、本題から少しはずれるが、かの大国には誇りなどないのであろうか。異教徒の小国に向かって、武器を持つな、と言って最新鋭の武器で攻め込もうとしている。国連決議も世界中の反対の声も無視して…。それと比べれば自動停止装置で守られた運転士の居眠りぐらい、かる〜い、かる〜い…                           (次へ)