随想 第110回 写せなかったもう1枚

カメラマンは常に危険に囲まれています。
事実、日本写真家協会の仲間で撮影中に亡くなった人もたくさんおられます。建物から転落死した人、水中撮影中に事故死した人、トンネルの入り口で撮影中に電車と接触して亡くなった人、ヘリのプロペラに巻き込まれた人、そして空撮中にヘリごと墜落死した人などなど。

大学の先輩で当時日本広告写真家協会の会長だった早ア 治氏も同様で、新潟県の海岸で撮影中に転落死されました。1964年の東京オリンピックポスターの撮影で有名になった写真家なので新聞など多くのメディアが報じました。

さて、私もヘリによる空撮など種々の撮影をしてきましたが幸い命を落とすまでには至っていません。しかし、命拾いしたことは何度かあります。
              

上の写真は磐梯吾妻スカイラインの人気スポットである「つばくろ谷」にかかる不動沢橋です。写真のような高い位置から俯瞰撮影しようと朝一番に上がったのですが決して安全な場所ではなく、さらに標高が1,300mであることを忘れていました。三脚に大型カメラを取り付けてレンズを装着しようとしたとき、すさまじい突風でカメラごと飛ばされたのです。5メートルほど転落したところで体は木に引っかかって止まりましたが機材は音を立てて落下していきました。
何が起きたのか考える余裕もなく無我夢中で這い上がりました。何とか元の位置に戻ることができましたが、また突風の心配があるのとカメラがなくなったので撮影をあきらめて足元を確認しながら慎重に下山しました。その時、今後は危険な場所での撮影は止めようと心に誓ったのですが・・。

       (続く)