第10回 べガスの灯よ 永遠なれ


先月は半月遅れたので今月は半月早くお送りします。

プロとアマの同時取材(その4)


さあいよいよ大西部へ出発。
荒野のフリーウエィを100キロ以上でぶっ飛ばすわけですからTさんもハンドルに力が入ります。2時間ほど走ったところに「ルート66」のサインを見つけたので少し回り道でしたが立ち寄る事にしました。私と同世代の方なら多分ご存知でしょう、シカゴから西海岸を結ぶ道筋を歌った名曲「ルート66」を…。
この道に降り立ったのは私も初めてで感無量でした。ルート66のサインの上に「historic(歴史的な)」と大書してあり、道路脇には当時のバーやホテル、ガンショップなどが再現され今にもあの曲が聞こえてきそうです。いっそこのままシカゴまで、と思いましたが走り続けても1週間…とても無理ですがいつか実現するぞ!と心に誓いながら再びフリーウェィへ戻りました。

東へ東へと走り続ける間に天候が何度も急変します。
走る車内からTさんが捉えた「虹とコンボーイ」


やっとグランドキャニオンに着いたのは夕日が山に沈む寸前でした。
Kさん撮影の「夕日を浴びる観光客




翌朝青空の下に見る大峡谷にはTさんも大いに感動して数箇所のビューポイントを回りいろいろな角度から撮影して次の目的地のモニュメントバレイへ向かいました。

「オォー!」
夢の中で聞いた声はそんな叫び声でした。あれ、今の声は…?ボーとした頭でゆっくり目を覚ますとバルコニーに人の気配がします。こんな薄暗い時に誰だろう…と覗きに行くとなんとTさんが朝焼けに顔を赤く染めながらシャッターを切っているではありませんか!
しまった、また後れを取ってしまった…。
これがその時のTさんの写真です。


あわててKさんもカメラを構えましたが時すでに遅く、朝焼けの色は薄くなっています。昔から「プロの技術とアマの情熱」と言いますが、初めてモニュメントバレイの朝を写すTさんの情熱が彼を暗いうちから目覚めさせたのでしょう。
さあプロのKさんも負けてはいられません。じっと日の出を待ちます。やっと黄金色の朝日が昇った時、Tさんとは逆に背後の岩が朝日を受けて真っ赤に焼けたところを撮影しました(次の写真)。


こうなったらもうプロの意地です。なにくそ…、Kさんはここまで「やる気」にさせてくれたTさんと一緒に来て良かったとこの時思いました。プロとアマの撮影対象が違うのは仕方ないとしても「情熱」をなくしたらオシマイです。「30年の技術」の上にアグラをかいていればすぐに抜かれます。やはり技術と情熱とはどちらも欠かすわけには行かないようです。

昼間のモニュメントバレーを2点見ていただきましょう。
まずTさんの作品から。



この写真は色フィルターを使ってノスタルジックなイメージに仕上げており、私も好きな作品です。次はKさんの作品。



青空と白い雲を強調して広大な風景にまとめています。Tさんの作品ほど個性はありませんがその分カレンダーやポスター・パンフレットなどに利用される可能性はかなり高くなります。

さて最後に見ていただく写真はその次の訪問地 Antelope Canyonで女性を点景に入れている写真です。

Tさん撮影 (上) Kさん撮影(下)

この2枚を見てもTさんの方が個性的で、Kさんは説明的に撮っていますね。


さあこれで西部の撮影を終えてラスベガスへ。途中あまりにも星空が美しいので車を脇に止めてしばし星に見とれます。エッ、オトコ二人で?なんて言わないで下さい。写真が好きなオトコって純情なんですよ。そこで一句。


アリゾナの 荒野を流る 星ひとつ



ベガスに近い峠に差し掛かった時、前方を見て息を呑みました。今度は空ではなく下界が星のように輝いているのです。しかも空の数百倍も明るく…。

人類が作ったこのベガスという楽園を眼下にして思いました。環境保護、省エネなど叫ばれていますがオトナの遊びを享受するために今まで一生懸命頑張ってきたんじゃあないか、このベガスぐらいいつまでもまぶしいぐらいに輝いていてもいいのではないか、と…。

ベガスの灯よ、永遠なれ。

(つづく)