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 「京の景観を撮る」

「今、ふたたびの京都・・東山魁夷を訪ね、川端康成に触れる旅」(平山三男編 2006 求龍堂刊)を読みましたが、京都の景観を考える上で大いに共感しました。
東山魁夷の画集「京洛四季」への序文で川端康成が次のように述べています。

「京都は今描いといていただかないとなくなります、京都のあるうちに描いておいて下さい(中略)今はもう山の見えぬ京の町にも慣れた。しかし、都のすがたしばしとどめんとは、今日もなほねがふ。」と。
50年以上前に川端康成は壊れゆく京の景観を危惧していたのです。

次の写真は知恩院の高台から市内を遠望したカットですが、大屋根の後方に高層ホテルがそびえます。それまで31メートルだったホテルを60メートルに建替えすることを京都市が容認した(1991年)結果です。こうして見ると他のビルと比べていかに大きいか分かりますよね。
         

市民側と仏教会側から大きな反対運動が起こりましたが、最終的には建ってしまいました。伝統と格式があるホテルだけに残念です。

しかしこの反対運動が2007(平成19)年の新景観政策による高さ・景観規制の強化につながり、景観地区では31メートルを超えるビルが建てられなくなりました。
さらに眺望景観創生条例が制定され、これは眺望景観や借景の保全を図ろうとする制度で、フランス・パリ市の規制を参考にした全国で初めての画期的な条例です。

ヨーロッパで見られるように外側は古い町家のままに保ち、内部を改造する工夫をすれば、町並みの破壊も防げ、京都の美を保つことができます。
近年、ようやくその重要さが認識され、町家を再利用する動きが盛んになってきました。

そして次の2枚の写真を見て下さい。


   三井ガーデンホテル京都新町別邸


hotel INTERGATE 京都

これらはいずれも最近オープンしたホテルですが、道を歩いている限り立派な町家にしか見えません。ところが少し離れて見上げると5階建てのホテルなのです。

3階より上を少し後方にずらしているので威圧感がなく、まわりの景観になじんでいます。これからの景観地区でのホテルやマンション建築はこうすべきではないでしょうか。

こうして京の町並みを大切にして、来訪者に楽しんでいただきたいのですが、これ以上観光客が増えると私たちが市バスに乗れなくなってしまいます。あぁどうすれば良いのでしょう・・。