イギリス編(1)  花のロンドン


B&B

ヨイショッと…。

空港から電車に乗り継いでやっと駅に降り立った。重いスーツケースで手がしびれる。今回もホテルの予約はしていない。さぁ、宿をどうしよう?

あたりを見回していると一台のクルマが近づいてきた。

「よかったらウチへ泊まらないか?」

一見ホテルの呼び込みには見えない紳士が運転席から話しかけた。詳しく聞くと B&B(ベッド&ブレックファースト)つまり「民宿」だと言う。値段も安かったのでOKしたら重いスーツケースを持ち上げてクルマのトランクに入れてくれた。

お互いに初対面なのに何の不安も抱かない。これが紳士の国といわれる大英帝国なんだ!と、ひそかな感動を覚えつつ初のヨーロッパ取材の好スタートを切る。

案内してくれた家は大きくはないが小奇麗な家だった。部屋に入って驚いた。若い女性なら泣いて喜ぶ超かわいぃ〜インテリア。イギリスはB&Bが充実していると聞いていたが確かに安いホテルより Good!。オーナーの目が行き届き清潔で気持ちいいのだ。また、こうして個人宅に泊まるとその家の住人になったような気になる。これはホテルにはない味だ。まだB&Bを知らない方にはおススメ。

強風でテームズ川に…

翌朝1階のダイニングで他の宿泊客と朝食を共にする。ほとんどが海外からの客なので共通語の英語で話す。英語が母国語の客は早口でわかりにくいがそうでない客同士はゆっくりとお互いがわかるまで話すのでさほど心配はない。いろいろと情報が交換できるのもB&Bの魅力だ。

さて、外に出ると風は強いが快晴である。まずはビッグベンへと向かう。テームズ川をはさんでベストの位置に立つ。三脚に大型カメラをセットしてその上に冠布(ピントを合わせるための1m正方の黒い布)をかぶせたまま少し離れて構図を考えていた。

その時だった。通りかかった男性が私に大声で叫んでいる。聞き取れないので問い返すと 「Your cloth!」と言いながらテームズ川を指差している。見るとナント、冠布がプカプカと川下りをしているではないか。強風で飛ばされたらしい。冠布がないと大型カメラではピントが合わせられない。幸いにも手前を流れていたので追いついてすくい上げることができた。

大声で教えてくれた男は Cloth!と叫んだが冠布なんて知らないだろうし私の上着だとでも思ったのかも知れない。

衛兵交替式

冠布が乾くまで大型カメラが使えないので宿に帰り、手持ちで写せる中型カメラに持ち替えてバッキンガム宮殿の衛兵交替式を撮影に出かけた。

宮殿前はこの儀式を一目見ようと世界中から集まった観光客で一杯だった。遠いけどこの辺りで見ればいいや、というわけには行かない。こちらは生活がかかっているのだ。人ごみを掻き分けて正面の門前までたどり着く。

さぁ始まった。赤と黒の独特の軍服(?)を着た衛兵たちが音楽隊の行進曲に合わせて隊列を組んで宮殿に入ってきた。まるでおもちゃの兵隊さんだ。正面で整列し、観光客と向き合う。音楽も止み厳粛な雰囲気となる。静かな時間がしばらく続いたのに耐え切れなくなったのか私の横にいた若い女性グループが目の前のダンディーな衛兵に小声で何か言った。すると その衛兵がウインクして答えたのだ。女性達は大声を出して喜ぶ。

このユーモアが物語るように交替式は終始和やかだった。日本では考えられない事だ。京都御所で同様の儀式があった場合、このような会話は許されない事であろう。なにしろ日本はユーモア怠国(大国ではない)なのだから…。

それにしてもイギリスやアメリカのアングロサクソン系の人たちはエンターティナーとしては超一流である。ハリウッド、ディズニー、ユニヴァーサルスタジオなどなど。先天的なものなのか、あるいは彼らが世界のリーダーだ、という自負心がそうさせるのかは分からないが大いに楽しませてくれるのはありがたいことだ。

ただ、そんな彼らにも楽しませてくれない一面があることがその後次第にわかってくる

(つづく)