第70回  こだわり歳時記

  伝統美 


10月に入り、さすがに秋らしい爽やかな気候となった。美しい紅葉を早く見たいものである。

さて、書店には「秋の京都」を特集した雑誌が数多く並び、テレビでも京都特集が目立つ。京都の人気は根強い。1200年にわたる歴史と伝統が他の観光地では味わえない京都の魅力だ。

「日本に京都があってよかった」という名コピーをポスターなどでご覧になった方も多いだろう。最近、京都在住の外国の方が本紙で「世界に京都があってよかった」と書いておられたがこれも名コピーだ。

上の写真は中京区にあるお茶屋で撮影した舞妓である。衣装から帯、髪型、かんざし、そして背景の障子に到るまですべてが「伝統に裏付けされた美」である。京都では伝統の美しさを感じる機会が実に多い。

それを作り出すのは各分野の職人さんである。昔から日本では職人を尊ぶ伝統があり、熟練した技術によって、手作業で物を作り出す。しかし従来の厳しい徒弟制度の下では職人を目指す若者が育たないので、専門学校など現代的な教育施設の充実が計られ、成果をあげている。

 陶磁器などの芸術作品を作る人は一般に陶芸家などと呼ばれ、職人と区別されているが、まずは一流職人の技が必要であることを忘れてはならない。

先日、京都の物産出品協会に招かれ講演をさせていただく機会を得た。京都の物産品をただの土産物だと考えてはいけない、京都の長い歴史が生み出したものであるから誇りを持って販売してほしい、という会長さんの挨拶を聞き、さすがは老舗が名を連ねる協会だと感心した。


若くして人間国宝になられた江里佐代子氏がつい先日急逝された。錐金は古来より仏教美術に用いられた工法であるが、氏はもっと身近な工芸品への展開を試みる努力をされていた。
京都が誇る美の表現者をまた一人失った。ご冥福をお祈りしたい。

              (京都新聞 2007年10月10日掲載)