第48回  レンズ越しの風景

彩を写す

  秋を英語でオータム(autumn)というが米国では木の葉が「落ちる」ことからフォール(fall)と呼んでいる。散りゆく葉が物語る寂しさがこの季節の情である。葉が散る前に色付く姿は格別美しく、燃焼し尽くすかのごとくである。
 新緑も美しいが秋は黄色から深紅まで色彩が豊富で実に艶やかだ。そのため紅葉の名所は写真愛好家だけではなく一般の観光客で大賑わいである。

  上の写真は京都市左京区にある真如堂で、美しく紅葉した葉をマクロレンズで接写したものだ。ファインダーで見たまま写る一眼レフがこうした撮影には最も適している。コンパクトデジカメでも液晶のモニターが一眼レフと同様に見たまま写るのでクローズアップが可能である。しかもマクロレンズなしでもかなり近付くことができるので大変便利だ。
 
紅葉をより美しく撮るコツは背景に苔などの緑色を入れないこと。肉眼ではきれいに見えるが、赤色とは補色関係にあり、写真に撮るとお互いの色が冴えなくなる。そして赤を強調するフィルターなどを使って、紅葉をより赤く撮影することも大切だ。あとでプリントする時でも良い。自分でプリントする人は赤味をプラスすれば良いし、写真屋さんでも割増料金を払えば可能である。また、朝夕の赤い陽を受けて葉が輝いている時などに写せばより力強い作品となる。

 最近は紅葉の色が悪くて、と異常気象のせいにする人がいるが、それが事実だとしても努力すれば良い作品ができる。そして多くの人で混雑する有名観光地を避け、比較的すいているところでじっくりと撮影したい。
 雨で散った葉が竹垣に張り付いていたり、池や手水鉢の水面に浮いている風情なども見逃せない。深紅の葉が初霜で白く化粧した美しさも見事である。
 移り行く彩りを今年は思う存分写しましょう。

                   (京都新聞11月9日掲載)