第46回  レンズ越しの風景

雲を写す

  暑さ寒さも彼岸まで、とはよく言ったものだ。厳しい残暑が続いた今年もお彼岸が過ぎ、さすがに涼しくなった。ベストシーズンの到来である。

海外取材の際、快晴の青空を写す必要がある時はできるだけ10月に出かけることにしている。北半球に限った場合、統計上晴れる確率が最も高いからである。事実、パリでもニューヨークでもおおよそ晴れた。

しかし青空であればいつも良い写真が撮れるわけではない。ポスターなどの観光写真ではそれで良いが個性的な作品となれば青空だけでは弱い。そこに力強い雲があるかないかが重要なポイントとなる。
雲は写真集が何冊も出ているほど魅力ある被写体だ。いわし雲やうろこ雲は秋の季語であり、ひつじ雲などもこの季節に現れることが多い。掲載の写真は東山区にある八坂の塔と夕雲を写したもので、雲がなければ退屈な写真である。

それほどに魅力がある雲だが困ったことにそれはいつ、どこに、どんな形で出るかわからない。スイスの山で次々に現れる雲に振り回されたことがあった。シャッターチャンスを逃がさないためにはどのようなことに気をつければよいのだろうか?

まず十分なフィルム(デジカメの場合はメモリー)を持っていること。良い雲は続いて出現するため、どんどん写している間に「フィルム切れ」となってはおしまいである。
そして冷静な判断力も必要である。すぐに消えてしまう雲もある。どんなドラマチックな雲に遭遇してもあわてずにシャッターを切る。迷った時には縦位置でも横位置でも写しておく。写さずにあとで悔やむよりは良い。

さらに、偏光フィルターを常時携行していること。青空と雲のコントラストを協調するには欠かせないフィルターである。
これから快晴の日は上を向いて歩きましょう。

                   (京都新聞10月12日掲載)