第34回  京 都


京都の人気

なんと、「京艶」を見た関東の男性が京都の私の教室まで新幹線通学を始めた。東京で教室をぜひ!と言われていたが、なかなか始まらないので「ついにやって参りました。」と京都に来られたのだ。宿泊したついでに京都を撮影するそうだが、その熱心さに驚くと同時にそれだけ人を引き付ける京都を再認識する。

また、埼玉の若い女性は京都の個展会場で写真集「京艶」を買わずに帰り、どうしても欲しくなってネットで探しまわって、ついに当サイトにたどり着いて購入して下さった。「静」の空気が魅力で忘れられなかった、とメールを頂戴した。

そして千葉の女子高生。当サイトのギャラリーで「雪降る平安神宮の応天門」(京艶1)を見て、感動してメールを送ってくれた。近く修学旅行で「憧れの京都」に来るそうだが、本物を見てガッカリするのでは…と本人が心配している。それぞれが違う見方をするのだから、あなたの目と心でしっかりと見てください、と返事しておいたがどうなるか、こちらが心配になってきた。

こうしていろいろな方から京都への思いを聞くと、京都の人気を改めて認識させられる。書店でも京都に関する雑誌や書籍が多いのを見てもそれがわかる。そこへ、東京のある出版社から連絡が入った。

ある女流歌人の出版物に「京艶」の写真を使いたい、との依頼である。源氏物語の登場人物などを大変楽しく書いた本だが原稿を読んでいる内に千年以上前の平安時代に自分が生きているような錯覚に陥った。物語に書かれたのと同じ地に住んでいると思うと感動がこみ上げてくる。この感動を求めて多くの人が京都へやってくるのだ。

都大路の各所で数え切れないほどの歴史ドラマが繰り広げられた。長い歴史の中心地として京都は磨かれてきたのである。そこで育まれた雅(みやび)と伝統が京都の人気であり、魅力なのであろう。

世界遺産

評論家の加藤周一氏は若い頃に留学先のパリから帰国するやいなや京都に駆けつけた。欧州で京都が高く評価されていることを知り、新しい文化をどんどん取り入れている京都の姿を自分の目で確かめたかったそうだ。氏は次のように言った。「京都は京都に住む人たちだけのものではない。」

1994年、京都の17ヵ寺が世界文化遺産に登録された。そのニュースをドイツのローテンブルグで聞いた。京都を離れていた時に聞いただけに感無量だった。加藤氏の言葉通り、京都は名実ともに世界の文化財となったのだ。

その感動が消えない間に京都の撮影にとりかかった。それまでは海外を飛び回っていたが世界遺産登録が契機となって、京都人の使命のようなものを感じ、「京都」に本腰を入れることにした。

記録と創作

京都は絵葉書のように説明的に写されることが多い。案内書や記録することが目的であれば当然のことである。しかし、それは今までに私もやってきたことで今でも多くの写真家がやっていることだ。もっと個性的な写真を撮ろうと対象物をギリギリまで絞り込んだ。こうして誕生したのが「京艶」である。

記録と創作。絵画も始めは記録が主たる目的だった。ところが写真の発明以来、その役目を写真に譲りひたすら創作の世界へ進むことになる。では写真はどうか。

今でも報道写真を始め、真実の記録が重要な役目であることには変わりはない。しかし、映画やテレビ、ビデオからカメラ付きのケータイに至るまで映像が生活と密着した時代になり、単に記録にとどまらず表現として写真を使用するようになった。写真もやっと創作の世界へ進み出したのだ。

京都を写す

京都はなかなか写真にならない、とか京都は難しいという声をよく耳にする。それには理由がある。ひとつは、歴史があるだけに京都に関する出版物が多く、実に多くの写真が発表されており、普通に写したのでは「どこかで見た写真」となってしまう。

もうひとつは、歴史的な建造物が相手なので、つい観光的に(説明的に)写してしまうことだ。それでは最も良い季節に最も良い状態で写せる京都在住のカメラマンに勝つのは難しい。ではどうすればよいのか。

まず、三脚が必要な大型・中型カメラは敬遠したほうがいい。狭い場所に観光客がひしめく京都では三脚が使用できる所が限られている。大きなフィルムが必要な人でない限り、どこでも手持ち撮影できる小型カメラを使い自由なアングルで撮るべきである。

そして、ファインダーをのぞいて、見たことがあるなと思ったらアングルを変える、構図を変える、レンズを換えるなど「自分の写真」になるまで努力すること。各種のフィルターも活用すべきである。京都の市中にある寺院では朝霧などの自然現象は期待できないのでこうした工夫が必要となる。

桜や紅葉は盛りであればベストだが遅くても良い写真が撮れる。散りゆく姿にも散り果てた姿にも風情があるからだ。また、冬は観光客が減り、静寂に包まれた古都本来の姿が撮影できる。市北部の大原や鞍馬だと雪に出会う確率も高い。

葵祭りや時代祭などの祭礼で行列を近くから撮影する場合は出発前に写すのがコツ。行列が進み出したらチャンスは少なくなる。あらかじめ、出発時間や集合場所を確認しておこう。

さぁ、どうぞ京都へおこしやす。そして、あんたはんにしか写せへん京都を撮影しておくれやす。

ほな、おぉきに…。